ページ内コンテンツ
この度 森山記念病院にて乳腺外科を開設する運びとなりました。 私 同乳腺外科部長の長内孝之と申します。医師となり約35年経過し その多くを乳癌診療にあたっておりました。これまで多くの症例を担当させていただいております。
現在、本邦においても乳癌症例は急増しており、最近の全国集計では年間新規に約10万人近い症例が登録されております(2023年08月 日本乳癌学会発表)。日本人女性の8人から9人に一人は生涯乳癌に罹患されます。決して『稀な病気』ではございません。乳癌といえば 若い女性に発生する病気と思われますが、最近では高齢者の症例も増加しております。決してこの病気から『卒業』できる年齢はございません。その急増する乳癌ではございますが、早期に発見診療することにより90%以上は10年以上生存できます。また、新規薬剤や治療法の開発により 早期以外症例でもその治療成績は非常に改善しております。 当院でも その急増する乳癌症例に対応すべく乳腺外科を開設する運びとなりました。これまで遠くまで足を運んでいた患者様にとって お役に立てればと思います。
少しでも乳房に症状(しこり いたみ 分泌など)ございましたら ご遠慮なくご受診してください。また、他施設検診や人間ドックなどで再検査となりました場合にもご受診してください。再発進行乳癌治療中症例でも ご希望に応じて当方で対応いたします。また遺伝子の変異に伴う乳癌発症リスクの高い未発症症例(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)にも対応して参ります。乳癌以外の良性乳腺腫瘍に関しても対応いたします。
今後 当院HPにて乳癌疾患の説明(乳癌はどこにどのように発生するかなど)や 治療総論(手術のこと薬剤治療のこと)、治療各論(乳房温存手術、全摘手術、再建手術、薬物治療の選択方法など)随時アップしてまいります。
宜しくお願い申し上げます。
乳腺外科部長
長内 孝之
日本乳癌学会ガイドラインにしたがった治療(検査 手術 薬物治療)を行っております。再発症例対しても各種ガイドラインにしたがい生存率の向上に努めております。
日本では年間10万人を超える方が乳がんと診断されています。
乳癌の発生
乳癌は乳腺組織の乳管細胞あるいは小葉細胞から発生する悪性腫瘍であります。
乳癌の発生部位:乳癌の多くは乳管(母乳が通る管)から発生します(乳管癌、約90%)。また、母乳を生成する小葉から発生することもあります(小葉癌、数%)。
非浸潤癌と浸潤癌:乳癌が乳管内の壁内にとどまっている状態が非浸潤癌(非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌:早期癌)であり、乳管の壁外に浸潤した状態が浸潤癌である。したがって、乳管内にとどまったまま広範囲に広がる非浸潤癌もあれば、径1mmの乳癌でも壁を貫いた浸潤癌もある。
出典 医学書院 疾患別看護過程2020より
乳癌の周囲への伸展、転移
局所への進展形式:乳管内や腺葉内に発生した乳癌は乳管内を伝わって(進展して)広がったり、また、乳管壁(基底膜)を破り周囲へ浸潤し、周囲の間質や脂肪組織へ広がって増殖していく場合もある。ある程度の大きさに増殖すると、「腫瘤・腫瘍」として触知するようになる。また、腫瘍が皮下近くに達すると、皮膚を牽引する「えくぼ症状」や乳頭の陥凹を呈するようになる。さらに増殖・増大すると皮膚に及び、皮膚の発赤、浮腫、潰瘍などを形成するようになる。また、腫瘍が背側(胸筋側)に増殖すると胸筋浸潤・皮膚固定(腫瘍が触っても動きが悪くなる)の状態を呈する。
画像 アストラゼネカ社 医療用イラストバンクより
リンパ行性転移
乳癌が局所で増殖・増大していく過程で、乳癌細胞は周囲のリンパ管に波及するようになります。リンパ管に到達した乳癌細胞はリンパ管内に入り込み、リンパ節へ転移を起こします。リンパ節のなかでも最も転移を起こしやすいのは腋窩リンパ節であります。また、そこを起点に鎖骨上リンパ節や頸部リンパ節へ進むこともあります。そのほか、胸骨傍リンパ節に転移をきたすことがあります。
出典 医学書院 疾患別看護過程2020より
血行性転移
周囲に浸潤をきたした乳癌は、その周辺の血管に直接入り込んだり、また、リンパ管・リンパ節を介して血管内に入り込みます。その血管から血流に乗って他臓器に至り、そこで転移病巣を形成することもあります。転移しやすい臓器は、骨、肺、肝、脳などでありますが、体内であればいかなる場所も、転移する可能性はゼロではありません。
乳癌の疫学(背景データ)
【疫学・予後】
疫学調査では、[1]都市部>農村部、[2]高学歴、[3]未婚・未産、[4]初潮年齢の低年齢、[5]閉経時期の遅延、[6]肥満体型(とくに閉経後肥満)などの傾向があげられている。食生活では動物性蛋白を多く摂る傾向や、アルコール摂取との関係などがあるとされております。
日本:年間約10万人が罹患する(2019)
35 年前と比べて発生頻度は約3倍以上となり、増加は続いています。
わが国の女性が罹患する悪性腫瘍では第1位となっております。日本人女性の9人に1人が罹患するデータです。死亡率は第5位であります。
乳癌と診断された段階(病期、stage)が重要であります。10 年生存率は、病期0:98%、病期1:約90%、病期2:約80%、病期3:約60%、病期4:40% 以下であります。
参考 医学書院 疾患別看護過程2020より
乳癌の症状
自覚症状:乳癌の自覚症状で最も多いのが腫瘤触知であります。そのほか、乳房痛や皮膚の変化(えくぼ徴候)、乳頭の変化(陥凹、変形)などを契機として受診することもあります。また早期に、乳管の初発症状として乳頭からの血性分泌で発見されるケースもあります。
転移に伴う症状:
【診断・検査-1】
視診・触診:乳房の左右差、乳頭の変形、腫瘤の大きさ・硬さ・可動性、乳頭からの分泌、腋窩リンパ節の腫大などを重点的に診察する。
乳房X 線撮影検査(マンモグラフィ):乳房を圧迫し撮影する。
当院では3Dマンモグラフィーを導入しております。
乳房超音波検査:乳房に直接超音波の探触子を当てて、内部の状況を検査する。
その他:乳房MRI 検査(乳房内の多発病変の有無や、広がり診断、質的診断を行う)、全身検索(骨シンチグラフィ、全身PET 検査など)。
※乳癌と診断がついたら、治療に進む前に全身検索を行い、病期を確認し、その病期や病状によって適切な治療方針を決定する(すべての乳癌において初期治療が手術ということではない)。
【診断・検査-2】
穿刺吸引細胞診(FNA):乳房内に腫瘤を認めた場合,良性・悪性の区別のために針を刺入して細胞を採取し、検査を行う。
針生検:細胞診では診断がつかない場合、16 G(ゲージ)程度の太針を用いて組織を採取し(コア針生検,CNB)、病理検査を行う。
吸引式針生検(VAB):マンモグラフィのみで確認できる石灰化病変を的確に穿刺し(吸引式乳房針生検)、組織を採取する方法。
出典 医学書院 疾患別看護過程2020より
治療法
【治療法】
原発性乳癌では、病期に応じた外科的治療と、再発予防治療としてのホルモン療法、化学療法を行う。
【治療方針】
【外科的治療】
【乳房温存術】
乳房温存術
術後 温存乳房への放射線治療
画像 アストラゼネカ社医療用イラストバンクより
【原発性乳がんの方針図】
参考 医学書院 疾患別看護過程2020より
【術後補助療法-1】
1)乳癌術後再発予防治療に対する治療方針
乳癌術後の補助療法:乳癌手術にて摘出標本を検査し、その乳癌のホルモン感受性の有無を判断する。 リンパ節転移の有無や他のリスクカテゴリー(脈管侵襲、癌悪性度評価など)を行い、その結果、ホルモン感受性がある症例に関してはホルモン療法を第1選択とする。 また、ホルモン感受性がない症例に関しては化学療法を第1 選択とする。化学療法とは化学物質による薬物療法で、いわゆる抗癌剤による治療である。抗癌剤は、1つの薬剤を決まった分量で使うことよりも、複数の薬剤を組み合わせて使うことが多く、組み合わせる薬剤の種類と分量、1回の治療の単位(コース、クール、サイクルなどという)の期間、それを何回行うかのパターン(レジメンregimen)が、臨床研究によっていくつか確立されている。
出典 医学書院 疾患別看護過程2020より
【術後補助療法-2】
参考 医学書院 疾患別看護過程2020より
抗がん剤の副作用
再発乳癌に対する治療方針
・乳癌の再発治療に関しても、患者の乳癌組織のホルモン感受性の有無に従って治療方針を決定する。
・また、再発部および患者の病状(生命の危機に瀕しているか否か)が重要である。
参考 医学書院 疾患別看護過程2020より
参考 医学書院 疾患別看護過程2020より
参考 医学書院 疾患別看護過程2020より
一般社団法人日本乳癌学会 よりCOVID-19(新型コロナウイルス)流行に伴う乳癌治療のトリアージ(方針、選択肢)が示されました。その原則は「乳癌患者を守ることであり、患者の予後(特に生命予後)に悪影響が出 ないように最大限努力しつつ、さらに今は患者と医療者を感染から守ることとバランスを取りながら診療」とされております。
当院でも この方針を順守しつつ今後の流行の状況に応じて対策を講じてまいります。
COVID-19下での病状緊急度
COVID-19流行評価
2020 日本乳癌学会発表 COVID-19 に伴う乳癌診療トリアージから
COVID-19と乳癌診療の参考資料
同一法人の森山脳神経センターでMRI乳がん検診を行っております。
ご予約サイトはこちら
また検診後の精密検査などの診療は、当院の乳腺外科でもおこなっておりますのでお気軽にご相談ください。
役職 | 乳腺外科部長 |
---|---|
学歴 | 東京医科歯科大学 平成元年卒(医学博士) 留学 欧州腫瘍学研究所(イタリア ミラノ) |
経歴 | 山梨県立中央病院 麻酔科 東京医科歯科大学 外科医員(研修医) 社会保険三島病院 外科医員 町立津南病院 外科医員 慈生会等潤病院 外科医員 東京医科歯科大学 助手 東京医科歯科大学 乳腺外科 診療副部長 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科助手 あんしん会 四谷メディカルキューブ 乳腺外科部長 東京都保健医療公社(現在 都立)大久保病院 外科医長 総合病院土浦協同病院 乳腺外科部長 |
資格 | 日本乳癌学会専門医 指導医 日本外科学会専門医 指導医 日本がん治療学会がん治療認定医 日本臨床腫瘍学会暫定指導医 検診マンモグラフィー読影認定医 難病指定医 Tokyo Breast Consortium 運営委員 Tokyo Metroplitan遺伝性乳癌卵巣癌研究会世話人 日本遺伝性腫瘍学会専門医 |
PR | 乳癌は非常に増加しております。気になる症状がございましたら、また検診などで再検査必要となりましたら、ご遠慮なくご来院ください。 |
ご紹介の際は乳腺外科又は各曜日の担当医宛でご紹介ください。
また、緊急の場合や、早急に入院が必要の場合は、救急外来まで直接ご連絡いただければ、すぐに対応いたします。
お問い合わせ
【受付時間】7:45~11:00
【診療開始時間】8:30~
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
---|---|---|---|---|---|---|
午前 | ||||||
10診 | 長内 ※完全予約制 |
|||||
午後 | ||||||